ナスダック(NASDAQ)とはアメリカの代表的な株式市場のひとつで、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に次いで2番目に大きい株式市場です。
アップル社やマイクロソフト社、FacebookやInstagramのメタ・プラットフォームズ社、テスラ社などのハイテク企業やIT関連企業などの新興企業が占める割合が多いのも特徴です。
正式名称を National Association of Securities Dealers Automated Quotations(直訳すると全米証券業協会自動見積)といい、その名称にも入っているように1971年に世界初の電子株式市場として誕生し、自動取引システムの導入がされています。
ナスダックには一定の要件を満たす新興企業について形式基準の緩和措置があり、日本のIPOでは少なくとも3年はかかる準備期間を、最短で半年に短縮することができます。さらに日本の3~10倍程度の資金調達額が見込めることから、ナスダック上場に挑戦する日本企業が増えつつあります。
ナスダックは「グローバルセレクトマーケット/NASDAQ-GS(大型株)」「グローバルマーケット/NASDAQ-GM(中型株)」「キャピタルマーケット/NASDAQ-CM(小型株)」の3つの市場にわかれています。
東証(東京証券取引所)のプライム・スタンダード・グロースのように、上場にあたっての審査基準などが異なり、「グローバルセレクトマーケット」が最も基準が厳しく、「キャピタルマーケット」が最も易しいのが特徴です。
日本企業にとって、ナスダック上場後のメリットは以下の通りです。
・アメリカ市場でIPOすることで、グローバルでの知名度・信用力が向上する
・アメリカを中心とした機関投資家へのアクセスが可能になり、調達金額が大きくなる
・優秀なグローバル人材の採用に有利になる
・株式回転率が世界の株式市場で最も高いナスダックへの上場は、株式の流動性を高める
・高い成長を継続している場合、利益を出していなくても上場が可能である
・新しい産業(暗号資産・メタバース等)について比較的に上場しやすい
デメリットは以下の通りです。
・上場規制が厳しい
・上場維持の手間・コストがかかる
自動取引という名の通り、ナスダックは電子商取引分野では世界最高峰を誇ります。その強みを生かした取引の瞬発力や情報の効率性においては世界トップといえるでしょう。また、高い流動性・成長性に加えて、資金調達額の高さは、非常に大きなメリットです。
反面、上場規制が厳しく、全社監査・SEC報告が義務付けられていることから、上場維持のコストと報告書作成の手間がデメリットになっています。
日本市場への上場と同じように、ナスダックへの上場も証券会社や弁護士、監査法人などの関係者との契約から始まります。その後のナスダック上場へのプロセスは以下の通りです。
アメリカの関係者に渡す必要がでてきますので、契約書や請求書、領収書といった各種書類をスキャンして電子化、なおかつ英語に翻訳する必要があります。
英訳された事業計画や契約書などの電子書類をアメリカの弁護士がチェックし、対象の企業の価値やリスクを調査します。弁護士から送付されてきたリストに従って書類を準備していきます。
アメリカの会計基準に準じた財務諸表の作成が必要になりますので、日本基準で作られた財務諸表をアメリカ基準に変換します。
アメリカの監査法人が、直近の過去2-3気分の財務諸表の監査を行います。監査法人から送られてくるリストに従い、財務情報・監査証拠(請求書や領収書等の証憑)を準備して提出します。
米国証券取引委員会(SEC)によって指定されたフォーム(F-1もしくはS-1)に従って、目論見書を作成、提出します。
提出した目論見書を米国証券取引委員会が審査します。約1か月でコメントが送られてきますので、コメントの内容に従って修正を行います。この修正のやり取りが3-4回ほど繰り返されることがほとんどです。この審査のプロセスは3-4か月ほどかかることが多いでしょう。
日本での上場と同様のプロセスもありますが、各種書類の電子化・英訳、アメリカの会計基準に応じた財務諸表の作成、アメリカの監査法人による監査対応など、大きく異なるプロセスもあります。各ステップに応じて専門スキルを持った人材が必要になるでしょう。全て社内のリソースで対応することはなかなか難しいのが現実です。
自社で対応できる部分とそうでない部分を見極め、外部の専門家の力を借りることも大切なポイントです。
資金調達額が多い、準備期間が短いなど魅力的なメリットがある一方で、上場に関する注意点もあります。
以下の3つの点を押さえておくと良いでしょう。
上場後はもちろん、準備段階からアメリカの監査法人とのやり取りが頻繁に発生します。
英語力を持った人材の確保は上場の必須条件の第一歩と言えるでしょう。また、アメリカの監査法人には日本の法律や商習慣への理解はないと考えましょう。日本独特の商習慣も英語での説明が必要になります。
ナスダック上場後は、アメリカの基準に準じた財務諸表を四半期ごとに作成しなくてはなりません。また、アメリカの監査法人による監査を受けることも必要になります。
日本の会計基準と重複する部分も多いですが、有給休暇の会計処理など、日本とは大きく異なることもありますので注意しましょう。
そしてなおかつ、日本での税務申告や決算公告が必要です。
上場後は日本とアメリカ、それぞれの基準に決算対応できる体制が求められるのです。
年間売上高が1億ドル、公開株式の時価総額が7億ドル以下の企業は内部統制の構築が免除されますが、超過した時点で体制の整備が求められます。
自社の成長度合いに応じて、内部統制の構築を段階的に進めていく必要があります。
ナスダックについて、基本的な用語の説明から上場のメリットとデメリット、上場へのフローや注意点についてお話しました。
日本市場と違い、上場の準備期間が大幅に短縮できることや資金調達額が大きく見込めることなどから、日本企業がナスダックへの上場を目指すケースが増えています。
特に日本で上場を目指す場合には最低でも3年かかり、毎年多くの企業が上場を断念している現状があります。
ナスダックへの上場には、英語力だけではなく、専門的な会計や法律、日本の商習慣の知識が欠かせません。これは確かにハードルになりますが、アウトソーシングを活用すれば決して難しい道ではありません。
ナスダック上場をご検討の際にはぜひ弊社にご相談ください。